そこには、芸能人たちからの激励のメッセージとともに、「単独無酸素の意義」を解説するコーナーが掲載されていた(注:筆者は取材を通して、栗城さんが掲げる「単独無酸素」という看板がひどく誤解を生む表現であり、虚偽表示や誇大広告に近いことを知る)。それを見て私は愕然とした。私の企画書の文章が、そっくりそのままコピペされていたからだ。実現しなかった全国放送の番組のために書いたものだった。
「ボンベが重いし高価なので他の6つの最高峰では使わなかった」という栗城さんの言葉まで、そのままサイトに掲載されている。
「やったのは栗城本人ですよ。ボクらは逆に口出しできないです。彼はそういうとこメチャクチャこだわりますから」
栗城さんは「ボクのことを書いた原稿だから、ボクのもの」と思ったのだろうか? 仮にそうだとしても、自分の嘘まで載せてしまう感覚は理解に苦しむ。大勢の人たちが閲覧するサイトなのだ。
次に食らったパンチは、更に強烈だった。
《えっ! 流しそうめん? カラオケ?》
私は支援者が国内で応援イベントでも開くのか、と思いながら聞いていた。ところがそうではなかった。
「ギネスに挑戦します!」
栗城さんがニッコリと笑った。彼のアイデアで「ギネスブックに挑戦」と銘打った生中継企画が行なわれるのだ。私は会議の場で初めてそれを知った。BCに入ってから山頂アタックに出発するまで、高度順応の期間が3週間ほどある。ギネス挑戦企画はその間に催される、登頂本番を盛り上げるためのプレ・イベントだった。栗城さんはエベレストをどういう場所だと考えているのか……。ここは世界中から集まった数多の登山家が、登頂に歓喜し、挫折して咽び泣き、凍傷で指を失い、あるいは友の亡骸を下ろした、過酷なる「聖地」ではないのか?
そこで、流しそうめんにカラオケ? 先人たちにあまりにも非礼ではないか。栗城さんはかつてこうも語っていた。
「山に登れば登るほど、その大きさがわかって謙虚な気持ちになる」と。ならばエベレストは、いくつもの山を登り、謙虚な上にも謙虚になって、ようやくたどり着いた「山の中の山」であるはずだ。そこでなぜ余興が必要なのだ? 一体どこが謙虚なのだ?
打ち合わせを終えて移動するタクシーの中で、私は正直な感想を彼にぶつけた。
「登山というよりイベントですね?」
栗城さんは真顔で答えた。
「そうですね。絶対に面白くする自信があるんで」
面白くする? ……私はその言葉に、違和感を大きく超えて、嫌悪感を抱いた。それを顔には出さず、こう尋ねた。
「仮に登頂の生中継ができないとしたらどうしますか?」
彼は即座に返答した。
「それならエベレストには行きません」中継ができないなら登らない……そう明言したのだ。彼は更に言葉を続けた。
「ただ登るだけではつまらないので」登頂が目的ではない。世界最高峰の舞台からエンターテインメントを発信するのが、彼の真の目的なのだ。こんな登山家は過去にいなかった。
「一対一で山を感じたい」という山への畏敬と、「ただ登るだけではつまらない」という山への冒涜……彼が気づいているかどうかはわからないが、これは対極をなす。私には「夢の共有」が「矛盾の蟻地獄」に思われた……。
私は少し呼吸を整えた。そして質問を変えてみた。
「他の登山家が同じようにネット中継をしたら、栗城さんはそれを見ますか?」彼は珍しく言葉に詰まった。10秒ほどして、「いやあ、面白く見せられる人いますかねえ?」と首をひねった。
2009年9月7日、「ギネスに挑戦!」企画第一弾が生中継された。標高6400メートルのABCを舞台にした「世界一高いところで流しそうめん」だ。日本から持ち込んだ人工竹を斜面に組み、茹でた素麺を上から少しずつ流した。つゆの入った椀を手に、栗城さんが下で待ち構える。つゆはテレビ番組『料理の鉄人』の鉄人シェフが作ったものだ。
「来ました! 来ました!」
氷点下の冷気に表面が凍りついた素麺が、ポチャンと音を立てて椀の中に落下した。栗城さんがそれをチュルチュルと啜る。「おいしいです!」とカメラに笑顔を向けた。
その1週間後の9月14日には、「世界一高いところでカラオケを歌う」企画が中継された。ABCより更に上の標高7000メートル地点で、栗城さんは『ウイ・アー・ザ・ワールド』を歌った。ゼエゼエ、ハアハア、と息は荒く、時にひどく咳き込みながらの、ある意味「熱唱」だったが、同じ曲には到底聞こえなかった。
※全文はリンク先で
集英社オンライン2023.02.01
https://shueisha.online/entertainment/97968
引用元: ・【登山】エベレストで流しそうめんにカラオケ!? だんだんと方向性を見失っていった登山家・栗城史多氏の晩年 [征夷大将軍★]
登山の遭難や事故見てるとどんなに重装備の体力あるベテランでも天候など運が悪ければどうにもならんのがわかる
生きて帰ってこれてる間に止める事も大事だな
そう。死ぬときは死ぬからな。山野井さんとかがおかしい
栗城だけ責めるのもな。この記事にちょっとでてくる谷口けいもつまんない死に方してるし
まぁ目立った分、叩かれるのはしょうがないんだけど
テレビに出始めた初期に始めて見た時から
強烈な違和感を感じていたし
その後に自分の目は間違っていなかったと確信した
最後は絶体不可能な滅茶苦茶なルート挑戦を吹いてから
滑落死ってのは彼らしかったのかもね
逃げ出したくても色々なしがらみがあって逃げ出せなかったのでは?
しがらみなんか無かったよ
むしろ、みんなが栗城から逃げ出していくのに苦しんでいたと思う
バカの死を無駄にしてはいけない
何座も登ってないんじゃないかな
マナスルもピーク手前で登頂認定されてないし
詳しくは栗城まとめWikiで
ダウラギリとチョーオユーだかの2座は認定されてるやろ
結局初期に登ったその2座だけになったけど
一座も登ってない奴が批判だけしてて笑うわ。
イベント屋がからむとだんまりになるテレビ業界は
おかしいだろw
あまりつかなくなってたんじゃないかな
最後のエベレストとも言ってたし
やってたことはインチキ臭が半端なかったけど
せめて生きて帰ってきてほしかったね
むしろ相手しなかったらさらにエスカレートするタイプ